「またも彼女のペースに乗せられてしまった…」
氷室は深い溜息をつき自宅マンションのリビングのソファに横になり天井を見つめながら呟いた。
室内は彼の好むモノトーン基調に配され家具もシンプルに最低限必要なものが置かれていた。

(バレンタインの礼に何が良いのかと彼女に尋ねたのがそもそもの間違いだったのだろうか…いや、恋人の好みそうなものを聞くのは当然だろう?問題は彼女の返答であり、彼女に逆らえない俺自身に問題があるのであり…)
鬱々とした気分で寝付けない彼は寝返りをうち顔をソファに埋めた。時計の秒針を刻む音が次第に大きく感じるように思えた彼は瞳をきつく閉じて眠りにつこうと努力をした。

コチコチコチコチ…
大分時間が経っただろうと思い彼が目を開けると背中に何か柔らかい感触を感じて彼は思わず起きあがり目を見張った。
薄闇の中にほの白く照らされるように彼女が安らかな寝息をたてて眠っていた。
「全く…君は。これでは寝室を明け渡した意味が無いだろう?」
氷室は困惑したような表情を浮かべ溜息をつき彼女を寝室に帰そうと抱き抱えようとした。
その刹那、彼のシャツを握りしめる彼女に気付き彼は彼女が起きている事に気付いた。
「起きているのか?」
彼女はシャツを握りしめたままコクリと頷いた。
「では、自らの足で寝室に戻れるだろう?」
彼は彼女を抱き抱えるのをやめ、そのままソファに座り込んだ。
「一緒にいたいんです。ダメですか?」
瞳を潤ませて彼を見つめてくる彼女と視線を合わせないように彼は言った。
「ダメだ。速やかに寝室に戻りなさい。」
「じゃあ、わたしがここで寝ます。零一さんが風邪をひいたら困りますから。」
「それもダメだ。俺も君に風邪をひかれたくない。さあ、戻りなさい。」
彼は半ば強引に彼女をソファから立ち去らせようと立ち上がり彼女の腕を掴んで起きあがらせた。
氷室から借りたパジャマ姿の彼女からは石鹸の言い香りがし彼の鼻腔を刺激した。
彼はあらがうように頭を振り自制心を保つように努力をした。
(教師でも生徒でも無くなった今、もう何も問題は無いはずだろう…しかし、彼女はまだ未成年者だ…未成年者を保護するのは成人男性の務めであり…義務だ。)
彼は自身に言い聞かせる様に呟いた。

彼女は彼のシャツの裾を握りしめると瞳を潤ませて彼を見つめて言った。
「じゃあ、眠るまで傍にいてくれませんか?わたし…心細くて。」
氷室はなるべく視線を合わせないようにしながら呻くように彼女に言った。
「き、君はもう大学生だろう?子供の様な事を言うのはやめなさい。それに寝付けないのは俺も同じだ。」
氷室は咳払いをし平常心を保ち続けていたが彼の限界は近かった。
彼の大きめのパジャマを着た彼女は犯罪的な危ない魅力を醸し出していた。
襟元から覗く白い肌、上衣に丈があるので彼女はズボンを穿かずにワンピースの様に着こなしていた。
彼女は氷室の限界が近いのを知っているのか彼に思いっきり抱きついてきた。
彼は顔を真っ赤にして上擦った声音で叫ぶように言った。
「こ、こら!やめなさいっ!」
彼女は更に抱きつき微かに意地悪い笑みを浮かべた。何か企んでいる時の顔だ…と彼は思った。しかも、よからぬ事を企んでいる時の表情だと…

「後、一押しですよね?せっかくのチャンスは生かさなければいけませんよね?」
「一押し?チャンス?なんの事だ?さあ、早く戻り…」
彼の言葉は突然の彼女のキスに塞がれ言葉にならなかった。
柔らかく甘い感触に彼は理性を失いそうになるのを感じた。
彼女の背中に腕を回し更に深く口づけを返した。歯列をなぞり舌と舌を絡め合い彼女の甘い吐息を感じながら彼女の回した腕に力が入らなくなるまで続けた。
ヘタッと氷室の胸の中に顔を埋める彼女の頭を撫でながら彼は囁いた。
「どうした?先程までの気勢は?」
「零一さんの意地悪…。」
彼女は呼吸を整えながら紅潮させた顔を向け呟いた。
「意地悪?君が最初に誘ってきたのだろう?君のせいで俺の努力は無駄になってしまった。責任をとってもらうとしよう。」
「責任、ですか?」
「そうだ。先に忠告しておくが今夜は君を寝かすつもりはない。」
「はい…。」
紅潮させた頬を更に紅潮させて彼女は嬉しそうに頷いた。
「では、ついてきなさい。」
氷室の差し出す手を握りしめ彼らは寝室へと向かいリビングから出ていった。




「本当にいいんだな?後悔は…」
問いかける氷室を遮るように彼女は口唇を重ね微笑んだ。
「後悔なんかする訳ないです。零一さん、大好きです。」
「俺もだ。君を愛している…。」

彼は彼女のキスに応じながら彼女の着衣を脱がし白い肌を露わにしていった。カーテンから微かに差し込む月明かりに照らされた彼らのシルエットはやがて一つになった。






規則的な目覚ましのアラーム音に彼の眠りは妨げられた。
彼は素早く目覚ましのスイッチに触れアラーム音を止めた。
すやすやと彼に寄り添うように眠っている彼女に笑いかけて横になった。

彼女の柔らかい髪を指で優しく梳きながら彼は呟いた。
「こんな俺を愛してくれて感謝している。ありがとう。近い内に君のご両親に挨拶をしにいかなければならないな?本来は君が卒業をしてから正式に報告をしに行こうと思っていたのだが…俺は君のペースに振り回されてばかりの様だ。」
氷室は苦笑を浮かべながら彼女を見つめ額にキスを落とした。
(幸い本日は休日だ。本来ならば既に起床をしている時間なのだが。もうしばらく君とこうしていたいと思う。)
柔らかい朝日に包まれながら彼は彼女を抱き寄せて幸せそうに瞳を閉じた。






END
はい!とうとういっちゃいました!脱どーてー!←ゴメンセンセ!
はい、表現できない描写部分は裏にアップしていたり(笑)寝室に入った後の話になりますが要は18表現箇所(汗)
メインと違う作風ばかりの場所ですけどね(笑)主にBLが主体なんで(笑)
興味を持たれた方はパスを私書箱にて申請してやって下さい
ただ、一度は掲示板に感想を書き込んで下さった方とさせて頂きます。
後は、イメージ壊れましたってのも勘弁して下さいね(汗)
特に裏が…(汗)