(遊園地の招待券4枚準備っと!後はアイツとあのコとあのコと仲の良い男の子を誘うだけっと!)
アタシ、藤井奈津美は最近仲の良い女友達を探したんだ。隣のクラスのちょっとボケっとしててドジなんだけど勉強と運動ができて…
「あっ!いたいた!おーい!…!?」
アレ?あのコと居るスーツ姿のヤツって…ヒムロッチじゃん!
(あのコ、なんかやったのかなあ…気配りはあるけど要領悪いんだよね…)
あのコはアタシの宿敵の数学教師に捕まっていたんだ。
廊下を走ろうとでもすればすぐにセンサーにて見付けてお説教!ウワサでは教会の地下にて作られたアンドロイド教師じゃないかって言われてるくらいこっわいの!
ほら、またコワーイ顔して指導してる…ん!?

アタシは目を疑ったよ!だってあのヒムロッチが顔を赤らめてるんだよ?あのコも目をキラキラさせて嬉しそうだなあ…
ってダブルデート…ヒムロッチを誘わなければいけないのかなあ?
アタシは余計な心配をしちゃったよ…でも、もしヒムロッチが参加するとしたら…それはそれで面白いかも…
アタシは声をかけてみたんだ。あのコは振り返って少し驚いた顔をしていた。
ヒムロッチはというと…今迄、絶対に見せた事の無い顔…カナリ焦っていた。
「…では、私はこれで失礼する!」
ヒムロッチ、声が裏返ってるよ〜!
「ヒムロッチ、次の日曜日予定あいていますか?遊園地の招待券が有るんですよね。」
ヒムロッチは機能が停止したようだった
。でもすぐに再起動して
「…次週日曜は外せない用がある。以上だ。」
顔はまだ赤いままだけどいつも通りのカンジで言いきられた…でもアタシ、藤井奈津美サマはこんなことくらいじゃ怯まないよ!
「外せない用事って、もしかしてデートですか?」
「デートではない!社会見学だ!…ただ現象だけを捉えれるとなるとそれはデートと呼称しうる者もいるが…」
…社会見学ねぇ〜
アタシは有名なアンドロイド教師が焦るのを見てビックリしちゃった。ヒムロッチも…生身の人間なんだなってさ。
突然、あのコが言ったんだ。
「あの、零一さん…行く場所も同じですし。
皆で行きませんか?
遊園地。」
えっ!社会見学場所は遊園地なの?ヒムロッチ?
流石のアタシも驚いたね。だってさヒムロッチがメリーゴーランドに乗ったりするのって想像できる?
「シーッ!声が大きい…。分かった、分かったから…そんな目をしないでくれ…。」
ヒムロッチは気持ちを落ち着かせているみたいだった…数秒後にはヒムロッチは元の調子を取り戻していた…流石だねぇ…
「では次週日曜は急遽、課外授業へと変更をする。場所は同じく遊園地だ。午前9:30分バス停前に集合だ…ところで藤井、君は先程参加人数が4人と言っていたが後一人は誰なんだ?」
思いがけない質問に今度はアタシが焦った…だってヒムロッチと一緒って言ったら姫条きっと嫌がるよね?
「あっ…これから誘おうかと思ってたんです〜。」
「そうか、それならよろしい。当日はくれぐれも遅刻などをしないように。以上だ。」
アタシは安堵の溜息をついてヒムロッチが遠ざかるのを見てた。さあ!どうしよう!やっぱ姫条誘おうか?アタシはダメモトで姫条に声をかけた。
「姫条!今度の休みって暇?」
「ああ、なんも予定入っておらんけど…なんや自分デートに誘ってるんか?」
「違うって!遊園地の招待券4枚貰ったから皆で行こうかと思っただけだよ!」
ああ…アタシったら何を否定しているんだろ…
「なんや、ダブルデートか?で、俺と自分と後2人は誰なんや?」
「……ヒムロッチ…」
「なっ!なんやて!自分、氷室センセ誘ったんか?正気か?で後一人は誰なんや?」
「アンタも知ってる例のあのコ…。」
「ほんまか!行くで行くで〜!氷室センセと一緒ちゅうのがアレやけどなあ…」
アタシは思いがけない姫条の返事に戸惑った。だって…絶対に嫌がると思っていたから…。あのコ…あのコが来るから来るの?
「な、なんで氷室センセなん?あのセンセが遊園地なんて行くんか?本当は冗談でしたって!なんてオチやろ自分?」
「…本当だよ…あのコを誘おうとしたらヒムロッチも一緒にいたから…多分、ヒムロッチ…姫条、アンタのライバルだよ。」
「ライバル?なんやそれ?氷室センセが…」
「だって、ヒムロッチ誘ってたもん…あの子をさ。」
「なんやて!自分、それはほんまか?信じられへん…
けど自分がこんな嘘ついても何の得にもならへんしな…。」
それに…まさか…両思いなんてオチもあらへんやろ…。」
「アハハ!それは無いよね〜。」
姫条の背中をバンバンと叩きながら無理してアタシは笑った。…アタシは言えなかった。あの子がヒムロッチを恋する瞳で見つめていたことを…
キラキラ瞳を輝かせて嬉しそうにしていたなんて…
でもさあ!日曜日にはバレちゃうじゃん…
ヒムロッチとあの子のラブ×2を目の当たりにして姫条、余計にショック受けるんじゃ…
「ほな、待ち合わせ場所はどこなんや?」
「あっ、9:30分にバス停前だってさ…」
「9:30分にバス停前な?よっしゃあ、了解したわ。楽しみにしとるわ。」
アタシは軽はずみなことをしたのをスッゴく後悔した…
姫条、本気だよね…
傷つくかな…

そうこうしてるうちに日曜日が来た…
アタシは早めに家を出た!折角の休みなのにヒムロッチに小言、言われたくないし。
でも10分前に着いたハズなのにヒムロッチとあの子は既にバス停前にいたんだ…
「藤井、中々早いな。大変結構だ。普段も時間を厳守するように。」
って、10分前だよ!アタシはあの子に小声で聞いた。
「ねぇ、アンタ何分前に着いていたの?」
「わたしは15分前かな…零一さんはわたしより先に来ていたみたいだけど…」
あの子は笑いながら答えた。
ヒムロッチもなんか…いつもより雰囲気が違うなあ…
「時間だ。後一人足りないな…。」
姫条〜!!何遅刻してんのよ〜!アタシは心から叫んだ。
「すんません〜遅うなりましたあ!」
…やっときたよ。アタシは溜息をついた。
「姫条、集団行動では時間厳守だ!何故守れない?」
「昨日ドキドキしてボク眠れなかったんですよう〜」
「寝付けれ無かったか…同感だ…。コホン、次からは時間を守る様に!では、遅れた時間を取り戻さなければ…行くぞ。」


アタシ達は遊園地に着いた。入り口前にてヒムロッチの課外授業恒例の説明の後、入場!
アタシ達、課外といっても場所が場所なだけに私服なんだ。あのコはソフィアブランドで統一してる。もしかしてヒムロッチの趣味?
姫条は赤いシャツに黒いズボンに定番のチョーカー
…でヒムロッチはというと…ビシリとスーツ姿なんだなあ…夏なのに暑くないのかなあ?
「本日はお化け屋敷に行く。人間には恐怖心というものが存在する。しかし、それは主に視覚、聴覚をトリガーとして発生される感情の一種でしかない。感情とは個人の様々な経験に基づき発生する。それ故に、人間は訓練によって意識的に恐怖心の発生を防げるのではないかという私の仮説に対する検証実験を行う。以上、何か質問はあるか?なければ入場するぞ。」
「はい!氷室センセ!」
「なんだ、姫条?」
「ほんまはキャーとかいいながら抱き付かれるのを期待しとるのとちゃうんじゃないんですか?センセのスケベ〜」
「なっ!何を言ってるんだ!断じてそんな意図などない!君達の恐怖心を克服させるのが目的なだけだ…」
「そんな事ゆうてもセンセだって男やろ?ちょっとは下心なんかあるんやないの?」
「し、下心だと!その様な感情など無い!皆無だ!彼女は氷室学級のエースであり私の自慢の生徒だ。私は逆に君と一緒だと彼女が危険だと…。」
「あんなあ、いくらなんでもプライベートに口出さんといて下さい。個人の恋愛はウチの校則では自由やろ?あんなセンセほっといていこいこ!」
姫条は無理やり、あのコの手を引っ張ってお化け屋敷に入って行った…

ヒムロッチは黙ってみてるだけだし…
「ヒムロッチのバカ!」
「…教師に向かってバカとはなんだ、藤井?」
「だって本当にバカじゃん!カッコつけて自分の気持ちに嘘つくなんて…」
「…本当の気持ち…そうだな…私は君達生徒にいつも正しい答えを教え導かなければならない…
しかし…私自身にも今の感情は説明がつかないんだ…ああ、藤井、君のいう通り私は馬鹿だ…彼女は対等な立場で共に成長していける相手の方が幸せになれるだろう…。」
ヒムロッチは寂しそうに呟くように言ったんだ。
「違う!違うよ!ヒムロッチは分かってない!だってあのコはヒムロッチの事が好きなんだよ!ゴメンなさい…アタシが面白半分でこんな計画立てちゃったから…。」
アタシ、ポロポロと涙を零してた…
後悔とヒムロッチに対する申し訳ない気持ち…
いろいろな気持ちがごたまぜになって…
「藤井、泣くのは止めなさい。
…確かに君の言う通り私は彼女に生徒以上の感情を持ちつつある…しかし、それは…教師としてあるまじき感情だ…。」
「…つまり、センセはあのコが好き、そういうことやろ?」
「ああ、そうだ。俺は彼女を愛している!……?!!姫条!?いつの間に!?」
アタシも驚いた、お化け屋敷に入って行ったとばかり思っていた二人が目の前にいたんだもん…
「氷室センセ、やっと本心を打ち明けられたやん!お〜!熱い熱い!妬けちゃうなあ〜
こいつもセンセと一緒の方がいいみたいやし、お返ししますわ!」
姫条は軽くあのコの肩を押して笑って言ったんだ。
「…でもセンセ?こいつ泣かせたらいつでも攫っていきますから…」
笑顔が消え真剣な眼でヒムロッチに告げると
「ほな俺らはここで!藤井〜いこか!」
姫条は無駄にハイテンションにアタシの腕を引っ張り早足にその場を去って行ったんだ…
「姫条、待ってよ!あまり引っ張ると痛いって!」
アタシは姫条の顔を覗き込んだ
…姫条、もしかして泣いてる?アタシは黙り込んだ。
「…なあ藤井、笑わんといてくれな?…俺な、本気やったんやで…
今、あいつを完全に吹っ切ってから気づいたんや…本気やから…
アイツには幸せになってほしいんや…」
アタシは黙って姫条の手をギュッと握っていた…
姫条、ゴメン…
ゴメンね…
呪文の様に心の中で繰り返しながら…







季節は秋になり冬になってアタシ達は卒業式を迎えた。
式典の後、アタシは姫条と教室の窓から外を見ていた。入学した頃が懐かしい…。
結局ね、姫条とは仲の良いお友達な関係のままなんだけどね…
「おっ!藤井、あそこにおるのセンセとあのコやないか?」
姫条が指した方向には、あのコとヒムロッチが仲良く連れ添って学園の外れにある教会から出てくる姿があったんだ。
アタシは勢いよく立ち上がり黒板に直行してチョークを手にした。
カッカッカッ…静まりかえった教室にチョークの音が鳴り響いた。
白いチョークに水色、ピンク…
「おっ!自分、絵上手いなあ!どれ!俺は氷室センセ描いてやれ〜。」
数分後、黒板には大きな相合傘が完成したんだ。ヒムロッチとあのコのね。
「姫条、いくらなんでもそれじゃヒムロッチの目つき悪過ぎだよ!」
「ほな、これならええやろ?ほれ、ちょいちょいと〜。」
姫条はピンクのチョークを手にしてヒムロッチの顔に描き入れた…
照れた顔のヒムロッチ…
「あはは!このヒムロッチなんか可愛いよ!じゃあアタシも〜!」
アタシは同じ様にあのコの顔に描きいれた。アタシ達は描き続けた。
”卒業おめでとう!”
”オレは認めん!”なんか夢中になって描き続けた。描いて描いて描きまくってアタシ達は笑いあった。
「藤井、今から時間あらへん?カラオケにでもいこうや〜」
アタシは勿論OKした。アタシ達もこれからなにかが始まる事を期待して…