生徒指導室の鍵を開け私は自身のクラスの受け持ちの生徒を連れて入室した。
指導の邪魔をされるのは好ましくないので内鍵をかけてから私は彼に椅子に座る様に促した。
彼は二つ返事で椅子に座り私もまた教員用の椅子に腰を下ろした。
彼、葉月珪はスポーツ万能、成績優秀で今までは指導の必要は無かったのだが、今学期末にあろう事か私の担当教科である数学で赤点、厳密に言えば零点だ。を取ったので彼に詳細を聞こうと思い呼び出した訳だが…
当の本人は何を考えているのか気持ちここにあらずといった表情で今、私と向かい合わせで椅子に座り窓の外を見ている。
私は咳払いをし彼に告げた。
「では、これより生徒指導を始める。」
彼は相変わらず上の空で外を見ている。
「君は私の話しを聞くつもりは無いのか?」
彼の反抗的な態度に私は苛立ちを隠せず尋ねた。
「…話、ですか?」
ようやく彼は窓から視線を私に向けて呟く様に尋ねた。
「そうだ。会話をする際には相手の目を見て話すのが基本だ。」
「…分かりました。」
そう答え、彼は黙って私の顔を見つめ始めた。
(全く…何を考えているのか理解不能だ)
私は溜息をつき彼に尋ねた。
「今学期末の数学の答案用紙の件についてだが、何故、君は白紙で提出したんだ?」
彼は瞳を閉じ考え込む様な素振りをし答えた。
「…寝てました。」
私は一瞬、我が耳を疑った。期末考査中に寝るとは一体…分析を試みたが全く答えは出なかった。
「き、君は期末考査中に寝るというのか?」
彼は動じる事も無く“…はい”とだけ答えて私をじっと見つめてきた。
「何故、期末考査中に寝たんだ?」
我ながら質問に不自然さを感じながらも私はそう彼に尋ねていた。
「…眠かったからです。」

「君は眠ければ何処でも眠るつもりなのか?」
私はつい語気を荒げて彼に尋ねた。
彼はその様子に少し驚いた様だった。瞳を閉じ俯き私に謝罪をした。
彼の素直な態度に私も怒りを和らげ彼に言った。
「分かればよろしい。君は言えば必ず理解してくれる生徒だと私は信じている。今後、気を付けなさい。」
彼は俯いていた顔を上げてじっと見つめてきた。
何処か寂しげで真剣な眼差しを向けられ私は一瞬、戸惑った。
「…実は最近眠れない…んだ…です。」
言葉を懸命に探す様に彼は瞳を閉じ言葉を紡いだ。
「…聞いてくれる…ますか?俺の悩み…。」
教師とあろう者が生徒からの懸命な訴えに無視をする訳が無い。
私は可能な限り表情を和らげ彼を見つめ返した。
「悩み事か?私でよければ相談に乗ろう。言ってみなさい。葉月。」
「俺、実は最近、気になるヤツがいるんだ…です。」
(フム、彼くらいの年頃には珍しくは無い悩みだな。恋愛問題か…少々、私には分が悪い相談だが…)
私は咳払いをし彼に尋ねた。
「それで、夜、眠れないというのか?」
正直、誰かを想い寝付けなくなる感情等、理解出来なかった。
「…はい。ソイツの事を考えると不安で眠れなくなる…んです。」
「不安?」
私は思わず聞き返した。
「ソイツ、鈍感なんだ…俺の気持ちに気付いて無いし…俺、ソイツに何か言ってもらうだけで嬉しいのに…ソイツ、いつも違うヤツと話していて…
だから、気付いてもらえるように…俺…。」
彼は瞳を閉じて俯いた。彼は“ソイツ”と言う人物の気をひくために試行錯誤をしているが報われない、そういう事か…
「葉月、自身の意志は伝えなければ相手には伝わらない。その為に我々には言語があるんだ。良くは分からないが…君なら大丈夫だ。自信をもちなさい。私が応援している。頑張れ。」
私は今、思いつく限りの励ましの言葉を彼に与えた。それが彼の救いになる事を願いながら……

「ありがとう…ございます。でも、言わない方がいいと思うから…俺。…アイツに伝えたら軽蔑されるのが怖いから…。」
葉月は寂しげな微笑を浮かべて大丈夫だからと呟いた。
「しかし、それでは君は!」
私は彼の辛そうな表情に耐えられなくなり思わず語気を強めてしまった。
「…じゃあ、貴方は…俺の気持ちを受け止めてくれるの…ですか?」
私は半ば混乱している状態で彼に答えた。
「ああ、もし私が君の思い人だとしたら必ず君の気持ちを受け止めるつもりだ!」
「…本当なのか…ですね?」
「二言は無い。」
私は咳払いをし彼に答えた。次の瞬間、彼から予測以外の言葉が返ってくることも知らず…
彼は真剣な表情で私をじっと見つめ呟くように言った。
「俺の…好きなヤツは…貴方なんだ…です。氷室先生。」
私は一瞬、目の前が暗くなり思考回路が停止をした。
同性愛好者…知識としてはあるが…まさか…担当クラスの生徒が…)
私は混乱してショートしかけた思考回路をまとめようとした。
「…やっぱり…嫌ですよね?」
葉月はいつの間にか椅子から立ち上がり私の隣に立っていた。
彼は思い詰めた様な表情でじっと私を見つめ笑いかけた。
「でも…俺、決めていたから。貴方に想いを伝えて嫌がられても…貴方を…。」
彼はいきなり私の唇を塞いできた。私は突然の事に彼を思わず突き飛ばしてしまった。
私は立ち上がり唇を拭い彼を睨みつけた。
「質の悪い冗談はやめなさい。葉月。」
彼は真剣な表情で私を見つめ返し
「冗談じゃないです…本気だから。赤点、取ったら貴方と二人きりになれると思ったし…。」
彼が私に向かって一歩前進する度に私は一歩後退していき壁を背に逃げ場を失った。
窓からの陽光は既に傾き空は暗くなりつつあった。

背中に壁を感じ私は少し焦りを感じた。
「もう…逃げられない…ません。氷室先生。」
葉月は壁に私を囲む様に手を当て微笑んだ。少し狂気じみた瞳の色に私は戦慄を感じた。
「大人しくしていて…下さい。…すぐに終わるから。」
彼が私の顎に手をかけ、また顔を近付けようとするのに顔を背け私は答えた。
「いい加減に悪ふざけはやめなさい。」
「ふざけてなんかいない…俺、本気だから。貴方の事を愛してます。」
「愛し…っ!」
私の反論は彼の唇に唇を塞がれて声にはならなかった。必死に彼の身体を引き離そうと試みるが彼と私の体力差は相当なものらしい…
彼にいつの間にか身体をかき抱かれている事に気付き私は懸命にその状態を打破しようと可能な限り身体を捩り抵抗を試みた。
しかし、彼に背中に腕を回され身体を押さえられた状態を改善する事は出来なかった。
瞳を閉じて唇をきつく結んで抵抗をしていたが耐えられなくなり口を少し開いた瞬間、彼は巧みに柔らかいものを私の咥内に挿入してきた。
あらがおうにもあらがえず彼の巧みな舌の動きに私の意識は朦朧としてきた。
私の意志は彼を拒んでいる筈なのに身体は彼を受け止めている様だった…。
彼に与えられる快楽に耐えきれなくなり私は力尽きた様に彼に身を任せた。
「初めてだったんだ…ですね。」
彼はそんな私の様子にクスクス笑いながら私を抱き抱え床に横たえた。
薄暗い室内で彼の息遣いだけを感じる。
私は半ば諦めの心境で彼を見つめ返した。
無様に逃げようとするのは私の美学に反する…それに彼の気持ちを真っ正面に受け止める事こそ教師である私に求められた…
否っ!あり得ないっ!
教師だから生徒の欲望のはけ口になるなど…
私は起きあがろうとしたが既に両腕を彼に押さえ込まれていた。
彼の唇が私の唇を塞ぎ私の意識はまた遠のいていった。

彼が唇をずらしながら耳、首筋、鎖骨へと移動をする度に抑えきれない衝動を感じざる得なかった。
スーツのジャケットのボタンが外されてネクタイが引き抜かれシャツのボタンを外されていく。
外気に晒された肌に彼は吸いつくように唇を落としていく。軽い痛みを感じ私は呻いた。
「赤くなってる…。これ、センセが俺のものって…印だから…。」
「私は…誰のものでもないっ!」
段々、息遣いが荒くなり話しづらくなる。何故、彼は平気なんだ?
私は今でも意識が遠のきそうだというのに。
「でも…今は俺だけのものですよね?」
葉月は私の胸に顔を埋めて嬉しそうに微笑んだ。
今でも彼を突き飛ばしてでも私はここから逃げ出したい。しかし…拒絶をした時に彼がどんな表情をするのかが怖かった。
私は彼に嫌われたくないのだろうか…
私は彼に印を付けられながら自問自答をした。
しかし、その物思いも打ち破られた。
彼は私の触れてはならない箇所に手を触れてきたからだ。
「なんのつもりだ?葉月っ!」
防音設備が整ってはいるとはいえ私の声は室内に反響をした。
「…言った筈です。貴方に嫌がられようとも、想いを伝えるって…。」
チャックを下ろす音がし外気に晒された自身に彼が手を触れるのを感じ私は起きあがろうとした。
「やめなさいっ!…っ!」
彼に自身をくわえられて私は身体を捩らせた。
「ほら…先生の大きくなってる。」
「う…はっ…やめなさい…やめないか、葉月っ!。」
「途中でやめると…先生が辛いだけ…ですよ?」
静かな室内に彼が自身に愛撫をする水音と私自身の声にならない声だけが絶え間無く続いた。

突然の痛みに私は呻いた。あり得ない箇所に異物を挿入される痛み。
普段、座薬しか受け付けない箇所に葉月は指を挿入してきた。
「痛いのは…最初だけだから。」
彼はそう答え、更に指を深く挿入してきた。

「そういう問題では無いっ!…くっ…!」
痛みに顔をしかめながら私は彼に言った。
翻弄され混乱する意識の中で私は自身が女性として扱われている事に気付いた。
しかし、私は女性では無い。故に文献で読んだように性行為をする際に不可欠な箇所を有してはいない筈なのだが…
もしや…男性同士というのは…私は導き出した答えに嫌な予感を感じた。
「だいぶ、濡れてきたようです…。」
自問自答している間にも葉月はペースを崩す事もなく着々と準備を進めていた様だった。
目を開いてみると全裸になった彼が私を見下ろしていた。
どうやら私自身も着衣を脱がされているようだった。
既に日は落ち、月の明かりにほの白く照らされた相手を黙って見つめ返した。
「抵抗はもう…しないんですか?しても…果たしますけど…。」
彼は余裕の笑みを浮かべ私の耳元に囁いた。
「君にされるならば悪くはない。」
答えた自身も言葉に少し戸惑ったが苦笑を浮かべ言葉を紡いだ。
「正直、拒絶をしたい。男同士でこの様な行為をするなど。今でも私は自問自答をしている。しかし、君の悲しむ顔だけは見たくは無いと気付いたんだ。葉月。自身の考えを検証した結果、どうやら私も君に好意を持っている。
でなければすぐにでも突き飛ばしてここから立ち去る筈だからだ。つまり、私は君を愛している。」
(そうだ、俺は彼に常日頃感じていたシンパシーが好意だと気付いたんだ。だから、君から逃れようとしても逃れられなかった…俺自身が君を求めていたからだ。)
「本当…ですか?嘘じゃ…ないんだ…ですよね?」
葉月の瞳からは涙かこぼれ落ち私の頬を伝わっていった。
「泣くのはやめなさい。」
私は彼の背中に腕を回してきつく抱きしめた。
「俺、嬉しくて…。絶対に嫌われると思ったから…せめて…最後に…。」
「いや、君を嫌う事などあり得ない。葉月。最後とはどういう意味だ?」

「俺、親元に行く事…にしたんです。貴方に拒絶されるのが怖かったから……最後に貴方に想いを告げてから…貴方の前から永久に去ろうと思ったんだ…です。」
「しかし、その…両想いとなったんだ。その必要性は無いだろう?」
葉月は力無く首を振って答えた。
「明日、発つ事にしてる。もう…無理なんだ。家、売っちゃったし。」
「では今、君は何処で暮らしているんだ?」
「…ホテル。明日の朝9時の便で俺、行きます。」
「ま、待ちなさい。葉月。住む場所が無いのならば私の自宅へこれば良い。君を失いたくないんだ。」
彼は一瞬、驚いた表情を浮かべたがすぐに嬉しそうに私を見つめて
「本当…ですか?俺、貴方の家に行ってもいいのか?」
「ああ、君一人を居住させるスペースは十分にある。」
「夢…みたいだ。貴方と一緒に暮らせる…なんて…。」
「ああ、私自身も驚いている。葉月、ありがとう。君は無色透明な私の世界に彩りを与えてくれた。」
葉月は瞳を閉じて私の胸に顔を埋めて呟いた。
「礼なんて…いりません。それより…先生、俺…限界なんですけど…。」
限界?…っつ!!!!」
身体を引き裂かれる様な鋭い痛みを感じて私は意識を失った。





「…先生?先生?」
遠くから誰かが呼びかける声に私は瞳を開いた。
見下ろす様に見つめる明るい緑色の一対の眼差しは不安げな色を湛えていた。
保健室のベッドに横たえられて私は記憶を辿った。生徒指導室で彼を呼びだし…彼と想いを伝え合い…その後は…。
「氷室先生、まさか…気を失うなんて思わなかったから…俺。」
彼の言葉から察するに私は行為中に気を失ったというのか?
起きあがろうとし鈍い痛みを感じベッドに沈み込んだ。
「先生、可愛い…。」
クスクス笑いながら頬に触れてくる相手を見つめ返し、
「可愛いという形容詞は成人男性に対して不適切だ。全く…君のせいで身体が動かない。」
「じゃあ、俺、姫を送っていくから…帰るところ一緒…ですし。」
不意に身体を抱き抱えられて私は焦った。
「や、やめなさい。歩けるからっ!」
「俺が、貴方をこうしたいだけだから…。タクシー、呼びますね?」

さすがに抱き抱えられるのは耐えられなかったので私は校門前で彼に肩を貸して貰いながらタクシーを待った。
「遠慮、しなくても良いのに。」
彼はクスクス笑いながら私に悪戯っぽい視線を向けた。
「生徒に抱き抱えられるなど教師として恥ずべき行為だからな。それに…よからぬ噂がたつだろう?」
「俺、貴方との噂なら…どんなのだって構わない…本当のことだし。」
彼は目を細めて嬉しそうに答えた。
「その、葉月。今日は済まなかったな…途中で終了させてしまい…。」
「…気にするな…じゃなくて…しないで下さい。だって、氷室先生、初めてだったんだろ…ですよね?」
葉月はクスクス笑いをやめてじっと見つめ
「それに、今夜は寝かすつもり…ない…ですから。」耳元で囁かれて私は一瞬、身体を震わせた。
「あっ、来た…みたいですね。タクシー。」
私はタクシーに乗り込みながら今後の事を不安に感じながらも期待に胸を躍らせていた。



END









後書きですぅ〜←逝け



はい!初のBLです(笑)タイトルは放課後の悪夢です(笑)
センセはやはりヘタレ受属性の様です(汗)
しかし、気絶しちゃいますか?
ハァハァハァ…←逝け
王子はテクニシャンだとジブンは思うので←ハイ?
王子のテクに骨抜きにされるセンセを…
で王子とセンセはラブラブ同棲生活へと移行していきます(笑)ただれてますね

センセ睡眠不足必死です←逝けよ
本当は強姦ネタの予定だったのですがやっぱりラブラブが良いので
ですのでタイトルと心理描写が(汗)
無理ありすぎだから(泣)
もう!逝っちゃえジブンっ!ぐはっ!