春の暖かい日差しが窓から差し込む。
こんな麗らかな日は公園にでも出掛けて仲良くお弁当でも食べたいよね。
と正面に座り頬を膨らませてこぼす君に僕は苦笑を浮かべながら諫める。
「出掛けるのは、この提出レポートが終わってからだ」
「期限はまだ2週間先なのに……」
恨めしげな視線を僕に向ける君に僕はページを捲りながら応える。
「先に為すべき事を成しておけば思う存分、楽しめるだろう?後、少しだ。お互いに頑張ろう」
「そうだね。うん、格くんとゴールデンウイークを楽しむ為に頑張る!」
少し大袈裟に腕まくりのリアクションをしてレポートに向かう君に笑いかけてから僕もレポートに取り組んだ。
シャープペンがレポート用紙を滑る音と時計が秒針を刻む音のみが部屋の中を支配する。
「うーん!もう限界っ!」
ペンを置いてパタリと机に突っ伏してしまった君に僕は時計を見て同意するように頷いた。
朝の9時から始めて、もう時刻は午後3時を指していた。
その間、休憩無しだったからな。仕方ないか。
僕は机に突っ伏した君を宥めるように頭に触れてみる。
サラサラした君の髪が僕の指の先に触れて心地いい。
髪の毛を指で梳く度に仄かにいい匂いもする。
「大丈夫かい?その、少し休憩をするとしよう」
僕はそれだけ言うと君に触れていた手を素早くひいた。
これ以上、君に触れていたら僕は……
「お茶を淹れてこよう。ちょうど3時だしね」
僕は君に悟られないように部屋から出ていった。

薬缶の前で僕は鬱々と自問自答をしてみる。
冷静になるんだと呟きながら。
確かに君とは彼氏、彼女の関係だ。
しかし、僕達は学生の身分だ。僕自身にしっかりとした基盤が出来る前に無責任な真似は出来ない。
避妊法だってきちんと調べてはいるけれど、もしもの事だってあるんだからな。
けれど、一番の問題は……
僕は沸かしたお湯をティーポットに注いで母が用意しておいてくれた昼食に気付いて慌てて一緒にトレーに乗せた。
サンドイッチ二人分。
(ありがとう。母さん)

トレーを手に部屋に戻ると君は僕のベッドに悪戯っぽい笑みを浮かべながら座っていた。

(一番の問題は君の無防備さなんだよな……)

僕は溜息をついてトレーを机に置いた。
「全く、僕の悩みを少しは汲んでほしいよ」
呟いたつもりだったのだけれど思ったより大きな声だったみたいだ。
「悩みって?」
ベッドから降りて僕の傍に心配そうに駆け寄り顔を近付ける君に僕は言葉を詰まらせる。
「いや、なんでもないよ。それよりサンドイッチを母さんが用意していてくれたんだ。食べよう」
「悩みって?なに?」
フルフルと否定するように首を振り君は真剣な眼差しで僕を見つめる。
(い、いえないよ。常に君に対して不純な気持ちを抱いているなんて)
「いや、本当になんでもないから」
「私じゃ相談相手にならないのかな?」
僕の腕をギュッと掴み悲しそうに問い掛ける君。
「そうじゃないんだ……その……」
僕は静かに君を抱き寄せて唇を重ねる。
「いつも、君にこうしたいと思っているんだ。これ以上の事も。だから、その……」
僕が全てを言い終わらない内に僕の唇は君の唇で塞がれる。
柔らかい唇と君の温もり。
「わたしも格くんにならキスもそれ以上の事をされたっていいよ」
僕の耳元に囁く君の甘い言葉。
目を開けると僕に負けず劣らずといった君の真っ赤に染まった顔がはにかんだ。
反対に体は少し小刻みに震えている。
「ありがとう。そう言って貰えて素直に嬉しいと思う。けれど……
お互い、その初心者だ。ゆっくり、今まで通りでいこうじゃないか。大切な君に無理はさせたくはないんだ」
君の震える肩を抱き寄せて僕は自分自身に言い聞かせるように繰り返す。
そう、ゆっくり確実にこれからを君と歩いていきたいんだ。
焦らなくても時間は沢山あるんだから。



‐END‐





お疲れ様でした〜♪
久々にアップしてみましたが氷上×主です。
本当はもっと裏ギリギリに持ってこうかと思っていたのですが、ウチのサイトのセンセもそうなんですが格もヘタレみたいです(泣)
次アップはまた学生時代を書きたいなぁと思ってます。
では、ありがとうございました!