休日の昼下がり春の暖かな日差しがテラスから差し込む麗らかな日なのに氷室は端正な顔立ちを不機嫌そうに歪めてキッチンで製菓の教本を片手に悪戦苦闘をしていた。
「ホワイトデーには、あなたの手作りのマシュマロが食べたい…。」
恋人からの断れない願いを叶える為に彼は慣れないお菓子作りをする事になった。
「一体、どの様にすれば綺麗なハート型に仕上がるんだ?」
一般的な料理はこなす氷室だが菓子を作るのは初めてだ。
彼の端正な顔は苦悩により歪み溜息をつきながら何回目かの失敗作を手に取り失敗作の山に積み上げる。
氷室の辞書には妥協という文字は無い。ハート型のマシュマロを作れと言われれば完全を求める性格だからだ。
エプロン姿の氷室が再度、コーンスターチで作った型にマシュマロの液を流し込もうとした時、キッチンの扉を開け眠そうな顔で明るい緑色の瞳をした少年が現れた。
彼は氷室に笑いかけて近付き皿に山積みにされたマシュマロを嬉しそうに見て彼に抱きついた。
「本当に、作ってくれた…んですね?」
突然、不意をつかれ抱きつかれた氷室は顔を真っ赤に染めて菓子作りの手を止め彼を抱きしめ返した。
「ああ、約束したからな。しかし…菓子作りとは難しいものだな。」
ぎこちなく笑う氷室に葉月は首を否定的に振り身体を相手から離して山積みされたマシュマロに手を伸ばし一つ摘んで口に入れた。
「ん、よく出来てる…。俺、甘いの苦手だけど…これなら平気。」
「ああ。君は甘いのが苦手だったからな。故に砂糖を控えめにしてみたんだ。」
嬉しそうな相手の笑顔につられて氷室も表情を緩める。
「しかし、つまみ食いは感心できないな。ほら、きちんと支度をするからリビングで待っていなさい。」
「ん。つまみ食いするならマシュマロより…あなたがいい。」
窘められた葉月は動じる事もなく氷室の手を取り指先を口に含む。
「やっぱり…こっちの方が…甘いな。」
ちろちろと舌先で氷室の細い指先を舐めながら上目遣いで悪戯っぽい視線を葉月は向けた。
「こ、こら…悪ふざけはやめなさい。」
指先を葉月の舌先に弄ばれて思わず叫ぶ氷室は次の言葉を発する事もなく葉月に唇を重ねられ自由を奪われた。
「ん!っ…!」
巧みに氷室の口内に葉月の舌がまるで意志を持つ生き物の様に入り込み彼の舌先を絡めとり弄ぶ。
「んっ!ふっ…」
氷室の全身からは段々と力が抜けていき口内には葉月が食べていたマシュマロの甘い残り香がいっぱいに広がり彼に与えられる快楽とマシュマロの甘さに彼は身を委ねた。
お互いを求める様にキスは更に深くなり舌先を絡め合う淫らな音が更にお互いを高ぶらせる。
名残惜しそうに離れるお互いの唇の先に銀糸が光り葉月は口元に笑みを浮かべ氷室を軽々と抱き上げた。
「ここでも…いいけど、零一が嫌がるから…」
「と、当然だ!そ、その様な行為をするのなら適切な場所が好ましいからな。」
抱き上げられて既に全身に力が入らないにも関わらず注意する氷室に葉月は静かに笑いかけて唇を塞ぐ。
寝室に移動する間、氷室は葉月の舌先の巧みな攻撃を受け続けた。氷室を抱きかかえたまま片手で寝室の扉を開け葉月は氷室をベッドの上に下ろしエプロンの紐を解き外しベッドの脇に投げ捨てる。
そのままズボンの上から氷室の自身を軽く触れ顔を恥ずかしさに歪める相手を楽しそうに見つめ唇を重ねる。既に意識が朦朧としていた氷室はそれを力無く受け止め相手の為すが為されるままに応じる。舌先が舌先を絡め吸う淫靡な水音がピチャピチャと静かな寝室に響いた。葉月は深いキスを交わしながら、その手は氷室のシャツのボタンを一つ一つ外していく。遮光カーテンが閉め切れられた寝室は日中でも薄暗く露わにされた氷室の胸元は艶めかしく仄白く映る。
葉月は氷室から唇を離して首筋に唇を落とす。強く噛みつくように強く吸った箇所には赤い痕がポツリと残る。
自分が付けた痕を満足そうに眺め葉月は指先で軽く触れた後、更にポツリポツリと氷室の白い肌に所有権を誇示するかの様に痕を付けていく。その度に与えられる鈍い痛みに氷室は背中を捩らせた。胸元に花弁を散らせ終わると葉月は満足げに微笑んで氷室のベルトに手をかけカチャカチャとベルトを外しズボンを下着ごと手慣れた手つきで引き下ろし外気に晒された氷室自身を愛おしそうに見つめ口に含んだ。
「や、やめないか。珪っ!それは口に入れる様なものではない…っ!」
慌てて制止しようと身体を起こしかけた氷室は直ぐに与えられる快楽に身を捩らせた。
なんとか止めさせようと葉月の頭を掴むが葉月は更に氷室の自身をくわえ込む。葉月の温かな湿った温もりに氷室は思わず呻く。舌先で巧みに弄ばれ氷室は己の自身が欲望にはちきれるのを感じた。
吐く吐息は更に熱を帯び恥ずかしさに身が狂いそうになるのを耐えながら彼は葉月の口内に欲望を弾けた。
「すまない…珪…」
恥ずかしさに泣きたくなるのを必死に堪えて氷室は相手に謝った。葉月は氷室の残滓を飲み込み口元を舐めて穏やかに笑い返し軽くキスをする。
「ん。零一の…おいしかった。」
「美味しい?」
「だから、気に…するな」
葉月は安心させる様に笑いかけて自身の指先を口に含む。唾液で微かに銀に光る指先を氷室の中へと挿入させ中を掻き回す。
「今度は…俺の番」
クチュクチュと中を掻き回され氷室の小さな入り口は次第に押し広げられ葉月を迎える体勢を整えていく。
「痛い…思いさせたくないから」
挿入する指先を増やして更に中を掻き回す。痛みと快楽に氷室は低く呻く。
「零一の…俺を欲しがってるみたいだ…ほら、吸い付いてくる。」
嬉しそうに囁かれ氷室は恥ずかしさの余りに瞳を閉じた。
「俺を、覚えてくれてるみたいだ…なんか…嬉しいな。」
相手がカチャカチャとベルトを外す音を聞き氷室は唇を噛みしめる。太股にあてがわれる熱を持った葉月自身を感じて彼は拳をギュッと握りしめる。その握りしめた拳を解くように葉月の手が重ねられ固く握る。氷室は葉月が中に入ってくるのを感じて握り返す手に更に力を込めた。
氷室の内部を突き上げてくる葉月自身に氷室は応じる様に身体を揺らす。クチュクチュと淫靡な音をさせながら更に奥へと入ってくる葉月自身を受け入れ氷室は溢れる涙を堪えた。
瞳を閉じると頬を銀色の滴が伝わっていく。氷室の涙に気付いた葉月は優しく舐めとり耳元に囁く
「後、少しだから…」
「ああ…君が満足してくれるなら…どれだけでも耐えよう」
「ありがとう…ございます」
葉月は嬉しそうに微笑むと更に与える振動に激しさを加えた。奥を深く突き上げてくる衝撃にベッドのスプリングは軋みお互いの額から汗が滲みベッドに滴が落ち濡らす。
「っ!っは!くっ!愛してます…零一っ!」
「俺もだ。珪っ!」
氷室の中で葉月は弾けて葉月は氷室の身体に覆い被さるように身を重ねた。
息を整え火照った身体が次第に冷めていくのを感じながら氷室は隣で眠っている愛しい恋人の髪を指先で梳きながら囁いた。
「ありがとう。君が傍にいてくれるだけで心が満たされる。君は無色透明な俺の世界に彩りを与えてくれた。」
スヤスヤと寝息をたてる相手の唇に軽く唇を重ね氷室は静かに微笑み相手に布団を被せ直し瞳を閉じた。
「やはり…相当な運動量を費やす様だ。俺も少し眠るとしよう。」
幸せな気持ちのまま氷室は微睡みに身を任せて眠りに落ちていった。





END





あとがきという名の反省文


はい。久しぶりに18指定を更新しました。本当はメインでと考えてたのですが構想中に主人公より王子の方で妄想が膨らんじゃいまして…(汗)←腐です腐!
で今回は性的な描写を更に研究し深くしてみました〜(汗)
なんかNLよりBLの方が進めやすいんですよ〜
やっぱりセンセはヘタレ受じゃないとねと…
では逃げます…
ここまでお読みいただきありがとうございました!